「周りの子はどんどん進んでいるのに、うちの子だけ…」
「塾の先生が◯◯さんはよくできていますよって言ってたけど、うちはまだ…」
そんなふうに、「うちの子だけ遅れているのでは?」という不安を抱いたことのある方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな不安に寄り添いながら、比較から自由になり、お子様の力を信じる視点をお届けします。
比較の沼にハマるとき
塾や学校に通っていると、どうしても「他の子」と比べてしまう瞬間があります。
進度・成績・理解度・テスト結果・面談でのコメント。
どれも数字や言葉で伝えられるため、つい我が子と他の子を比べてしまうのです。
これは、人間の本能でもあります。「比較」は安全を確認するための習性とも言われていますから、ある意味自然なこと。
しかし、この「比較」が過度になると、次のような影響が出てきます。
- 親が焦り、不安なまなざしを子どもに向けてしまう
- 「なんでできないの?」という言葉が増えてしまう
- 子どもが自己肯定感を失い、「どうせ無理」と思い込む
誰も悪くない。しかし、気づかないうちに負のループが始まってしまうのです。
子どもは他者と比較をされることで、劣等感を抱くケースが多いです。上には上がいますから、その劣等感は、本当のトップにでもならない限り、拭うことはできません。比較されて抱く劣等感は、とても無駄なものです。
「トップ」ではなく、「その子なり」の成績の伸び方を目指すのであれば、他者との余計な比較は必要ないのではないでしょうか。
子どもの学びは「点」ではなく「線」
多くの親が「学べば学ぶほど知識がつくはず」と思いがちです。
ですが、実際の子どもの成長は、そう単純ではありません。
「点」となる知識がたくさん集まることで、あるときポンと「線」としてつながるような理解をすることが多いのです。
それまではわからなかった問題も、ある単元がきっかけで突然スムーズに解けるようになる。
読解が苦手だった子が、好きな本と出会ってから一気に文章力が伸びる。
学びには「タイミング」があります。
他の子と比べて焦るよりも、お子さん自身の「理解の芽」が出るときを待つ姿勢が大切です。
「できていること」に目を向ける練習
私が保護者面談でよく行うワークがあります。それは、
「この1ヶ月で、お子さんができるようになったことを挙げてください」という質問です。
すると、最初は「うーん…」と悩む方でも、話していくうちにいろいろな発見が出てきます。
- 時間を意識して宿題に取り組むようになった
- 自分から塾のワークを開く日が増えた
- 家での会話の中で、「今日こんなことを習ったよ」と話してくれるようになった
これらは、テストの点数とは無関係に見えるかもしれません。
でも、確実に「学ぶ力の土台」が育っている証拠なんです。
比較するのであれば、他者と比較するのではなく、過去のその子自身と比較してあげてください。普段目を当てていないだけで、成長していることは結構あります。
不安との付き合い方:3つの視点
それでも、不安は湧いてくるものです。そこで、次の3つの視点を取り入れてみましょう。
① 過去の「伸び」を見直す
1年前、半年前、3ヶ月前と比べて「できるようになったこと」をリストアップしてみてください。
小さな変化にも気づけるはずです。点数だけでなく、取り組み方や姿勢でも構いません。視覚化して本人に伝えると効果的です。
② 周囲の情報を「参考」までにする
他の家庭の話や塾の情報も、あくまで「他のケース」。
「うちはうち、よそはよそ」と切り分ける意識が大切です。
「すごい」と言われている方法が自分の子には合わなかったということは良くあります。
勉強の方法は無限にあります。お子様に合った方法を見つけましょう。
③ 「今、我が子にできること」に集中する
不安を感じるときほど、「今日の1ページ」「今日のひとこと」など、
目の前のことに目を向ける習慣が心を整えてくれます。
背伸びをしてもどこかで無理がきます。一歩ずつ着実に進んでいきましょう。
焦らないことが、実は一番の近道
子どもは、大人の目線をよく見ています。
「親が焦っていない」「信じてくれてる」と感じたとき、子どもは驚くほど伸びることがあります。
逆に、成績に敏感になりすぎて親が不安を口にしすぎると、
「もっとがんばらないとダメなんだ…」と子どもが疲れてしまうことも。
塾でたくさんの子どもを見てきましたが、この声かけや取り組みで、誰でも絶対に成績が伸びるという方法はありませんでした。やはり、それぞれのお子様で必要なものは異なります。
勉強となると、つい正解や近道を求めてしまいますが、そもそも絶対の正解や近道はありません。
一歩一歩、子ども自身のペースで進んでいく。
それが一番確かな、学びの道なのだと思います。
🐧親の安心が、子どもの安心になる
「うちの子だけできてない?」という不安は、どの家庭にも起こるものです。
でも、比較の視点から離れ、「その子なりの歩み」を信じることができたとき、
親子の関係も、学びの力も、大きく前進します。
焦る気持ちが湧いてきたら、深呼吸をひとつ。
そして、「この子の歩みを、私は信じよう」と声に出してみてください。
それだけで、お子さんの目に映る世界は、きっと変わっていきます。
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