「せっかく塾に通わせているのに、家で全然宿題をやらない…」
そんなお悩みをお持ちの保護者の方、決してあなただけではありません。
宿題への取り組み方には、お子さんの性格や学年、塾のスタイルによっても違いがあります。
ですが、どんな子にも共通して言えることがひとつだけあります。それは―― 「取りかかるまでの第一歩がとても大きな壁になっている」ということです。
今回は、塾講師として多くのご家庭と関わってきた経験から、宿題をスムーズに進められるようになるための5つの具体的な対処法をご紹介します。
よくあるお悩み:「また宿題やってない…」
「机に向かわない」「ゲームばかりしている」「声をかけると嫌な顔をされる」――
そんな様子を見て、「やる気がないんじゃないか」と不安になってしまうこともありますよね。
ですが、実際のところ、多くの子どもは“やらなければいけない”ことは理解しているのです。
ただ、「何から始めればいいかわからない」「全部終わらせるのが大変そうで気が重い」など、 心の中でブレーキがかかっている状態なのです。
そんなときに、「早くやりなさい!」「どうしてできないの?」と強く言ってしまうと、ますます気持ちが遠ざかってしまうことも。
大切なのは、「なぜやらないのか」ではなく、「どうしたらやれるようになるか」に目を向けることです。
対処法①:学習するための環境を整える
自宅学習の環境を整えることは子どもの集中力に大きく影響します。また、塾もなかなか介入しづらい部分なので、親の仕事といえるでしょう。
以下のような環境が整っているかを確認してみてください。
勉強机・椅子
最近はリビング学習をするご家庭も増えてきています。親の目も行き届くので悪いことではないですが、リビングの机や椅子が、勉強に適したものであるかは確認しましょう。
机は字が書きやすいように、できるだけフラットなものが好ましいです。また、机の上や周りに物が置いてあるだけで、簡単に集中力が切れます。勉強をするスペースについては極力何もない、整然とした環境にしましょう。椅子は高さが調整できる方が良いでしょう。クッションのような柔らかい椅子では姿勢が崩れ、これも集中力の妨げになります。
教材を管理する棚・ボックス
塾のテキストや教材を合わせると膨大な量になります。科目ごとや種類ごとに分け、整理をするようにしましょう。やるべきものが素早く見つけられないというだけで、時間の無駄ですし、子どものモチベーションも下がります。特にその日に使う教材は一瞬で取れるようにしておいた方が良いです。
私の経験上、子どもたちは自分のかばんの中身でさえ整理できません。授業開始時にテキストを出すように促した際に、ぐちゃぐちゃのかばんの中から、ようやく見つけ出す姿を何度も目にしてきました。たった1冊のテキストを取り出すのに平気で数分かかる生徒もいます。塾で指導をしている先生なら全員が共感してくれるだろうというくらいよくある光景です。
家での教材管理は、量も多いのでなおさらだと思います。整理のされていない棚を見て親がイライラするのも、それによって子どもが怒られてやる気をなくすのも容易に想像がつくので、「整理整頓は親の役目」と割り切っても良いかもしれません。
筆記用具・ノート
短すぎる鉛筆、粉々にちぎられた消しゴム、折れたまま放置された定規など、特に小学生の筆箱には様々なものが眠っています。これらは、単に使いづらいだけでなく、手遊びの道具にもなります。見つけた時点でしっかりと交換するようにしてあげてください。
また、ノートについてもその日の勉強の途中でなくなってしまった場合には、その日の勉強がそこで中断してしまうため、ストックを準備しておくようにしましょう。ルーズリーフは便利ですが、自分自身で整理ができないと、どこに何を書いたか分からない状態になったり、ファイルに挟まずにそのまま紛失してしまったりするケースが多いため、「ノートをとったのにどこにあるかわからない」という状況になりがちです。自分で整理ができるようになるまでは、科目ごとのノートを使用した方が無難だと思います。
対処法②:「まずは1問だけ」でハードルを下げる
宿題の全体量を見ると、特に低学年のお子さんは「こんなにやらなきゃいけないの?」と気が重くなってしまいがちです。
そこで試してみていただきたいのが、「1問だけやってみようか」と声をかけること。
最初の1問に手をつけることで、「自分にもできる」という感覚が生まれ、そのまま2問、3問…と進んでいくケースが多いのです。
私の教え子の中には、「1問だけでいいよ」と言われて始めたら、結局その日の宿題を全部終えてしまったという子も何人もいます。
子どもにとっては、「始める」ことが一番のハードル。
小さくても確実なスタートを切るための「最初の1歩」、ぜひ意識してみてください。
対処法③:負担を軽減する
宿題の全てを一人でこなすとなると、子どもたちにとっては非常にハードルが高くなります。親がサポートとして取れるものはやってあげましょう。
例えば、答え合わせ。丸つけまで全てやらせた方が、本人が間違いに気づくことができるという意見もありますが、可能であれば親がやってあげたほうが良いと思います。そもそも子どもたちは自分が書いた答えを間違えている思って解かないですから、自分でミスを見つけられません。テストの際に「見直ししたはずなんだけどな」ということもよくありますよね。
漢字の線が一本足りない、算数の単位ミス、他の科目でも抜き出しミスや漢字ミスなど間違えそうな問題はたくさんあります。それらを全て子ども任せに丸つけさせて、間違えたまま覚えさせてしまうと、成績が伸びないのも当然です。せっかくアウトプットとして問題を解くのですから、本人以外の人間がしっかりとチェック機能を果たすべきだと思います。
また、答え合わせを親がすることで、今、どのような問題を扱っているのか、達成度がどれくらいなのかを把握することができます。苦手単元の把握が早くできることで、塾への相談もスムーズで具体的なものになります。
その他にも、教材のコピーや付箋を貼るなどの事前準備をしておくだけでも、取り掛かりは大きく変わります。「自分でできるようになってほしい」という気持ちは分かりますが、子どもたちは問題を解くだけでも十分に疲れますので、無理に自立を促すのではなく、できる部分はサポートしてあげても良いです。
対処法④:親も一緒に取り組む
宿題をやりたがらない要因の一つに「孤独感を味わう」ということもあります。授業ではみんなと一緒に問題に取り組むし、先生もいてくれます。それが急に宿題となると一人で取り組まなければならなくなる。ましてや甘えたい存在の親が近くにいてくれているのに何も声をかけてくれない。もちろん親としては、「邪魔をしてはいけない」とあえて何もしていないのですが、そんな環境が寂しいという子もいます。そこに畳みかけるように「宿題やったの?」「早くしなさい」と言われると、反発もしたくなるでしょう。
「一緒に取り組む」といっても、教える必要はありません。教えるのは塾の先生に任せましょう。家庭ではぜひ以下のような取り組みをしてみてください。親が一緒に取り組んでくれるだけで、子どもたちのやる気は何倍にも増幅します。
一緒に解いてみる
子どもが習っている単元の問題を一緒に解いてみましょう。塾に通っていると結構難しい問題を扱っています。難易度がわかることで、テストが返ってきた際に、点数の低さに大きく不安になることが減るかもしれません。
私自身は他科目の小テストを子どもたちと競うこともしていました。恥ずかしながら負けることも多かったですが、そうすることで、シンプルに「すごい」という気持ちから褒めることができます。子どもたちからしても、「大人に勝てた」というのは相当な自信になります。それがきっかけで「この単元得意だわ」と自慢げに言っている姿はとても微笑ましいですよ。
一緒に調べてみる
塾で習っている単元の周辺知識を子どもと一緒に調べてみるのも有効です。最近では、動画コンテンツや歴史漫画等も充実しているので、様々なものから深い知識を得ることができます。そのことがきっかけである分野にとても興味を持つようになった子は多いです。私の生徒にも「昆虫博士」、「城博士」、「首都博士」など様々な称号を持つ子がいました。お子様の「好き」を見つけるきっかけにもなります。
また、塾の解説動画も一緒に見てみると、指導のスタイル等が把握できます。「面白い先生だったね」というだけで会話のきっかけにもなるでしょう。
勉強についての会話をする
授業の内容を家庭内で話題にするだけでも定着度が上がります。例えば、道を歩いているときに、「この植物は単子葉類だね」とか。旅行に行く際に、「ここから何kmだからこの速さで行くと何分くらいかかりそうだね」とか。話せることはたくさんあると思います。塾での授業もそうですが、日常会話のなかにもインプットの機会はたくさんあります。
学校の友達との会話で本人が全く見たことのないアニメのキャラクターをやたらと覚えて帰ってくることもあるかと思います。毎日繰り返し話をすることでどんどん覚えていくのです。
ただ、できるだけタイムリーな方が効果的ですので、お子様が今習っている単元は把握しておくようにしましょう。
対処法⑤:計画を立てる
その日にやることと所要時間の目安がわかっていないから、スムーズに取り掛かれないこともあります。子どもには時間の感覚があまりありません。寝るまでにご飯とお風呂を済ませるためにはこの時間くらいから取り掛からないといけないという逆算は、大人にとっては当然でも、子どもにはとても難しいです。
その感覚のギャップから「いつまでダラダラしているの!」というケースは良くあります。
大切なのは「1週間のスケジュール」と「1日のやることリスト」です。
「1週間のスケジュール」は生活のベースになります。塾以外の習い事や、他の家族との兼ね合いもあるでしょうから、毎日勉強に使える時間は変わってきます。何曜日にどれくらいの時間を確保できるのか確認しておきましょう。
「1日のやることリスト」はできる限り詳細に記入しましょう。スケジュール帳に時間や教材名、進めるページ等を記入しておくと取り組みやすいです。
スケジュールは学習習慣の礎となるので、家族で話し合ってしっかりと決めましょう。はじめは大変ですが、慣れてくれば次のテストに向けてといった大きなながれも自主的につかめるようになります。
実践するうえで気をつけていただきたいのは、一緒に立てた計画は「約束」であるということです。その日に終わらなかったということもあるでしょうが、しっかりと次の日に回すようにしましょう。また、逆に予定より早く終わる場合もあります。「今日は調子がいいから」と計画以上のことをさせたくなりますが、それでは親が約束を破ることになります。予定以上の勉強は子どもにとって負担でしかなく、勉強にとってのマイナスイメージにつながりかねません。計画していたものが終わったのであれば、その後は自由時間にしてあげましょう。
🐧子どものやる気を引き出すのは、「小さな工夫と声かけ」から
子どもが宿題をやりたがらないのは、珍しいことではありません。
大切なのは、責めるのではなく、「どうすればやれるようになるか」を一緒に考えてあげる姿勢です。
ほんの少しの工夫と、あたたかい声かけがあれば、子どもは少しずつ前向きに変わっていきます。
宿題がスムーズに進むようになると、子どもも「できた!」という達成感を感じやすくなり、学習全体にも良い循環が生まれます。
今日ご紹介した5つの対処法が、お子さんとの毎日に少しでもお役に立てばうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「塾ママ戦略室」では、これからも家庭学習や塾との付き合い方に役立つヒントを発信していきます。
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